〜子どもから見た特性の捉え方の再検討をし、
子どもに合った機能的な単元計画の設計を考える〜
第32回全体研富山大会 研究委員長:細江文利
今回の大会では、岡山大会に引き続き「楽しい体育の深まりと広がりを求めて」、これまでの「楽しい体育」の基本的な考え方を確認するとともに、現在生起している授業実践をめぐる様々な問題点を検討し、楽しい体育の発展のための具体的な方策を探ることに焦点をおいている。
研究委員会では、この二年間、ことに各運動種目における課題領域において、子どもから見た特性の捉え方を再検討し、そこから子どもに合った機能的な単元計画の設計に向けて研究を進めてきた。それは、「楽しい体育」は子どもの立場を大切にしながらも、実際の単元計画のなかみをみると、それぞれのクラスの子どもに合ったものでなく画一化してきている。すなわち、子どもの学習の準備状況と遊離し、単元計画の形式が独り歩きしている状況が見られてきたという事実認識を得たからである。
運動目的・内容論に立ち一人ひとりの子どもを大切にする楽しい体育の理念を、正しく概念化するには、計画の形式および内容は、子どもが初めて出合う単元である場合や、既習単元である場合、さらに加えて子どもの学習の準備状況の諸様相に応じて、それぞれ固有の様相を呈してこなければならないと基本的に考えられる。この点を鑑みると、これまでの単元計画の形式の中で、子どもから見た特性の捉え方が、授業の展開部分の構想に結びつきにくかったのではないかと判断されるわけである。
今回は、こうしたことから、特に、この課題領域では、新規種目の単元および既習種目の単元の場合ごとに、子どもの学習の準備状況に応じた、適切な学習過程の設定と、それに準じた学習形態、学習活動、指導活動の流れを、できるかぎり単元計画の固有な内容として具体的に表現できるよう検討を加えることに中心課題を求めている。
さて、クラスの子どもに合った機能的な単元計画の設計を考えるために、先ず、子どもから見た特性をどのような視点から捉えたらよいかである。この点を踏まえると子どもから見た特性は、ことに運動の特性との係わりから子どもの学習の準備状況を捉えることが必要になる。その視点を次のように考えてみる。
1.子どもから見た特性を捉える視点
A 運動の特性に触れる楽しさ体験の状況
A−1 運動に対する興味・関心の状況
・仲間と共に活動すること自体への志向性が強い
・運動すること自体への志向性が強い
・運動の特性への志向性が有る
競争志向か
達成志向か
克服志向か
模倣志向・リズム志向・創作志向・民踊志向か
A−2 運動に対する欲求・意欲の状況
・その運動に対して意欲がない a
・その運動に注目し、注意を向けている。 b
・その運動を行うことによって満足感や喜び、楽しみなど
の情意的反応を示している。
c
・合理的な練習を求めたり、作戦を工夫しようとする。 d
B 技術の習得状況 −「技能」のレベル
技術・知識の習得状況
以上の視点から子どもから見た特性を一例として捉えるとつぎのようになる。 |
(障害走の例)
A−1 達成型志向(強)+競争型志向(弱)
A−2 合理的な練習を求めたり、作戦を工夫し
ようとする。
B 技術の習得状況−「技能」のレベル
リズミカルなインターバル走法ができる |
※ 単元計画を設計する上
で最も関与すると思われ
る項目を焦点化して捉え
る |
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子どもから見た特性を、このように二つの視点から捉え、ここから子どもたちはどん なねらいでもって、どのような内容を学習することができるかを導きだす。子どもから 見た特性は、従って、クラスの子どもの運動の楽しみ方を明確にする手続きということ になる。また、ここでいう「楽しみ方」というのは、運動の実態概念、すなわち、特性を意味する。
2.特性に応じた「楽しみ方」に関する学習経験の状況を捉える視点
一方、運動目的・内容論の立場にたつ体育は、運動の特性の学習を中心に据えながら、 生涯スポーツへの準備として、その学習が自発的・自主的なものとなるように学習を意 図的・計画的に組織しようとする。このとき、子どもたちが特性とどのような付き合い 方ができるかによって、学習の組織のしかたに工夫が必要となる。例えば、子どもたち が初めて出会う単元では、特性とどのように付き合っていったらよいか、その認知構造 は確立していないのがふつうである。そのためには、運動の内容(めあての幅)を狭め たり、あるいは教師の係わりを強めたりというように、運動の特性との付き合い方の学 習をよりよくするための指導の工夫が必要となる。クラスの子どもに合った機能的な単 元計画の設計を考えるためには、その意味で、特性に応じた「楽しみ方」に関する学習経験がどのような状況にあるかという視点から学習の準備状況を捉えることが必要にな る。その視点を次のように考えてみる。
◇ 特性に応じた楽しみ方に関する学習経験の状況
1.自分(チーム)の力に合っためあてを正しく持てるかどうかその状況
・教師の指導があればできる a
・仲間の協力があればできる b
・学習資料等があれば使って自分自身でできる c
・学習資料等を活用・発展させてできる d
2.めあてを達成するための運動の工夫や練習・挑戦ができるかどうかその状況
・1に同じ
3.協力や教え合いがオープンにできるかどうかその状況
・1に同じ
4.技術構造からみて、特性への付き合い方はどのようにできるかその状況
(ボール運動の例)
・やさしいルールとやさしい運動の場の条件であればゲームを楽しむことができる a
・攻防に戦術を駆使してゲームを楽しむことができる b
・技能を伸ばすことによってゲームを楽しむことができる c
特性に応じた楽しみ方に関する学習経験の状況をこのように捉え、ここから教師はど のように指導を展開していったらよいかを導きだす。この視点は、従って、指導内容の 手がかりを得る手続きということになる。また、ここでいう「楽しみ方」というのは、運動の実態概念とは違って、運動の特性との付き合い方(学習のし方)を表わすものであり、二次的な学習すべき内容を意味することになる。
このとき、教師はどのように指導を展開していったらよいかその指導内容、つまり、子どもの自主性と教師の指導性のバランスおよびその内容を具体的にどのように求める かについては、つぎに示す「学習様式の考え方」にその指標を得ると好都合と考えられる。また、この「学習様式の考え方」は、一つの単元の流れの中で考えるのが一般的である。つまり、低学年においても、あるいは、子どもがはじめて出会う単元においても、はじめの段階では基礎・基本型(PA型)で進めるとしても、目指すところはそれなり の発展・追求型(QB型)であるということである。
以上、クラスの子どもに合った機能的な単元計画は、「子どもから見た特性」と「特 性に応じた楽しみ方に関する学習経験の状況」を適切に捉え設計することが大切である ということになる。今回の大会では、こうした問題を中心に各運動種目ごとに具体的な 討議が展開されればと願うところである。
3.単元計画の形式
以上の問題を考慮し、単元計画の形式をつぎのように設定してみる。
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単元名
1 運動の特性
1)一般的特性
2)子どもからみた特性
A運動の特性に触れる楽しさ体験の状況(運動に対する興味・関心及び欲求・意欲)とB技術の習得状況に
ついて、単元計画を設計する上で最も関与すると思われる項目を焦点化して捉える。
2 子どもの様相(特性に応じた楽しみ方に関する学習経験の状況)
子どもたちが運動の特性とどのような付き合い方ができるかその状況を明らかにする。
3 学習の進め方(教師の授業への意図)
運動種目に関する子どもの学習の準備状況から、子どもからみた特性及び特性に応じた楽しみ方に関する学
習経験の状況を把握する手続きを経たら、つぎは、子どもの学習の変容に対応しながら、学習をどのように意
図的・組織的に設計していくか、学習過程、場の工夫、指導活動等、その見通しを明らかにする。但し、この項
目は必要に応じて取り上げる。
4 学習のねらいと道筋
1)学習のねらい
2)学習の道筋
ねらい@ めあて@
ねらいA めあてA
5 学習と指導の展開 |
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