1.3つの運動の特性
体育の授業との関連で運動の特性について一般的にみると,運動による心身や社会性への効果の違いに注目した運動の効果的特性,運動のしくみの違いに注目した連動の構造的特性,そしてプレーヤーの欲求充足や必要充足の違いに着目したプレーヤーからみた特性に分けられる。運動のしくみに着目した構造的特性に対して,効果的特性とプレーヤーからみた特性は運動の機能に着目しているところから機能的特性と呼ぶことができる。
2.体育の転換と運動の特性
体育の転換とは,(戦後の)運動を手段とする全人教育としての体育(運動手段論)から,運動の手段的効果を配慮しつつも,運動を教育の内容として位置づける体育(運動内容論)への転換を指している。運動手段論の授業計画(単元計画)の骨子は,指導目標(発達効果)とそれに至る指導過程で,学習活動(学習過程)はこの指導過程に沿って予定されたが,内容論では,内容を学習するのは子どもたちであるから,学習のねらいとそれに至る学習過程を軸に構成される。
運動の特性については,手段論では,発達への効果が目標になるので,運動の効果的特性がまず重視され,この観点から運動の構造的特性が分析的に配慮されることになる。一方,内容論では,内容を学習するのは子どもであるところから,子どもにとってこの学習が意味をもつものでなければならず,したがって目標自体が子どもにとって魅力のあるものである必要がある。かくして目標はそれぞれの種目について子どもたちの欲求,必要の重点がどこにあるかということと関連が深くなる。したがって,内容論では,何よりもプレーヤーからみた(機能的)特性が重視され,この観点から運動の構造的特性が配慮される。しかし,この構造的特性についても,プレーヤーからみた(機能的)特性は(全体としての)種目に特有なもの(この意味で,種目に内在するもの)であるから種目の全体的な構造への配慮が部分に優先する。ちなみに,楽しい体育は,プレーヤーからみた運動の機能的特性を重視する内容論としての体育を,シンボリックに表現したものといえる。
3.楽しい体育における授業構成(単元構成)レベルでの運動の特性
現在の体育は,運動の発達効果を従来以上に考慮しつつも,生涯スポーツおよび生涯学習とのつながりを重視しなくてはならない。スポーツはすべての人々にとって生涯を通じた生活内容になり,さらにそれを進めなくてはならないからである。生涯スポーツは,スポーツについての生涯学習を内包しつつ,レジャーの中で自発的に行われる。したがって,生涯スポーツとの関連を重視する楽しい体育では,授業構成(単元計画が何よりも重要)にあたって,先に見たように学習者である子どもの興味や関心の重点が当該種目のどこにあるかを,まず重視することになる。これが運動の一般的特性で,それはプレーヤーからみた機能的特性から導かれ,学習の目標に位置づくことになる。子どもたちはこの興味や関心に向けて運動に向かうことになるからであり,学習はこの過程の中に位置づいてこそ子どもにとって意味あるものになるからである。
単元では,この意味での一般的特性をもった運動を子どもは学習するのであるが,子どもには個人差があり,一般的な特性をそれぞれの子どもに一律にあてはめることはできない。経験や能力,興味・関心などの違いによって,同じ種目に対して積極的に関心を示す子どももいれば,逆にこの種目の学習を避けたがる子どももいるからである。学習上の障害や抵抗を除去,軽減するべく,目標のもたせ方や学習のしかたについての指導上の工夫が必要になる。
かくして,単元構成にあたっては,一般的特性だけでなく,学級の子どもの立場からこの一般的特性をもった種目を見直す作業が必要になる。これが子どもからみた特性である。子どもからみた特性は,したがって,「学級の子どもと(当該)種目(例えば,サッカー)」と表現してもよい。ここでは一般的特性の一般に対して,学級の子どもの個人差が問題になるが,実際には3つないしは4つくらいに絞られる。(永島惇正)
